軟骨組織は自己修復能が低い。骨髄に達する軟骨全層損傷では大きさにより修復の可能性はあるが、軟骨部分損傷(PTI)は修復されない。しかし、我々は3週齢の幼若ラットでは、PTIが硝子軟骨様組織で治癒することを明らかにした。これは成熟ラットではみられない。この違いは軟骨に損傷が加わった際のごく早期の軟骨細胞の反応として前初期遺伝子(Immediate early genes:IEGs)の発現パターンの差による可能性がある。そこで3週齢のラットと成熟ラットの間で、PTIを加えた直後のIEGsの発現パターンを比較し、軟骨を修復に至らしめるIEGsを同定し、治療に結びつけていくことが本研究の目的である。そこで、3週齢と9週齢のラットの膝関節にPTIを作成し、軟骨の損傷に対し、3週齢のラットでのみ特異的に発現してくるような遺伝子(修復に働く遺伝子と考えられる)を同定すること、あるいは9週齢のラットでのみ特異的に発現してくるような遺伝子(修復を阻害するような遺伝子と考えられる)を研究の第一の目的とした。本年度は3週齢と9週齢のラットの膝関節にPTIを角膜手術に用いるメスを用い作成し、マイクロアレー法を用いて、両週齢間での損傷が加わったことに対して発現してくるような遺伝子候補をピックアップした。本研究では3週齢でのPTIの有無についてのマイクロアレーと9週齢に対するPTIの損傷の有無に対するマイクロアレーを施行し、候補遺伝子をピックアップした後に(一次候補遺伝子)、各々をさらに比較して目的となる遺伝子(二次候補遺伝子)を求めることになるが、この段階までの実験を終え、二次候補遺伝子をいくつか同定し、その成果を学会発表した。
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