本研究の目的は以下であった。1)高齢者骨粗鬆症患者さんは骨脆弱性が高まり、まず脊椎骨折を生じ、その後、大腿骨近位部骨折をきたす、いわゆる「脊椎骨折から大腿骨近位部骨折への骨折連鎖」があることを検証すること、2)骨粗鬆症性骨折症例の血中25OH-D(ビタミンDレベル)、ucOC(低カルボキシル化オステオカルシン、ビタミンK充足レベル)を測定し、ビタミンD不足と骨折との関連を検討すること、3)骨強度の低下は骨構造あるいは骨組織での変化によると思われることから大腿骨骨構造(HSA hip structure analysis)および骨折症例の骨組織所見について検討することをめざした。 1)新潟大学病院および新潟県佐渡市佐渡総合病院、関連病院において2010年1年間で発生した新規大腿骨頚部骨折患者調査結果より、脊椎X線検査や聞き取りによる脊椎骨折既往の有無の検討をおこなった。その結果、大腿骨近位部骨折者の半数で脊椎骨折の既往があった。2)大腿骨頚部骨折者および脊椎骨折者において骨折受傷時の血中25(OH)Dを測定した。両骨折者共に基準値以下の低値であった。 3)骨組織所見の検討。大腿骨近位部骨折および非定型大腿骨骨折症例において骨折手術時に骨組織を生検し、骨形態計測を合わせて行い、骨動態を評価した。ビスホスホネート服用患者において骨組織所見は、多くの方で骨吸収、骨形成ともの低下あるいは基準値以内であった。少なくとも高値を示した例はなかった。 以上より、血液中25(OH)D の低値、すなわちビタミンD不足は骨折危険因子であり、ビタミンD 不足者は脊椎骨折、引き続いて大腿骨近位部骨折をおこすことが示唆された。
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