本研究の目的は、BMP-7(成長因子)を、徐放機能をもつゼラチンハイドロゲルシート(GHS)(生体吸収材料)に含浸させることにより、肩腱板断裂修復が促進するかを検討することである。 RIガンマシンチグラフィーを用いて、ヨード放射性元素で標識したBMP-7をラットの肩関節部に投与した。GHSを用いた群(GHS(+))と用いない群(GHS(-))で、投与後3週目まで比較検討した結果、GHS(+)群では、投与後3週目まで有意にBMP-7の肩関節での残留量が高いという結果が得られた。 次にラットによる肩腱板断裂修復モデルを作成し、A群:PBS(+),GHS(-)、B群:BMP-7(+),GHS(-)、C群:PBS(+),GHS(+)、D群:BMP-7(+),GHS(+)の4群に分類し、術後2,4,8週目で評価した。MRIで腱板の修復状態を評価したが、有意な差はなかった。μCTでは全例で明らかな異所性骨化は認めなかった。組織学的修復の程度を点数化した評価では、4群全てで術後週数が経つにつれて、組織修復が得られた。BMP7を投与した群(B、D群)では組織修復が促進される傾向を認めた。A群とB群の比較ではA群の点数が高かった。一方、C群とD群の比較ではD群の点数が高かった。術後8週目における点数は、D群が他群より高かった。BMP-7を投与した群(B、D群)では術後2週目に他群より炎症細胞を著明に認めたが、術後4週目以降は減少していた。 本研究の結果は、BMP-7を徐放させることにより、肩腱板断裂術後の修復を促進できる可能性を示唆している。これにより、臨床において肩腱板断裂手術治療成績の向上およびリハビリテーションの期間短縮を実現できる可能性がある。
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