研究概要 |
我々は、ヒト破骨細胞株を樹立して、骨粗鬆症の新たな治療薬に対しての効果を検討したいと考えている。これまでのところ、ヒト破骨細胞前駆細胞の樹立には成功しているが、細胞株の樹立には成功していない。我々のヒト破骨細胞前駆細胞作製方法は、GM-CSF存在下で培養して得られた細胞をメチルセルロース中でIL-3,GM-CSF,stem cell factorで2週間培養する。培養されたCFU-GMにレンチウィルスベクターを用いてhuman papilloma virus E6/E7を導入する。ピューロマイシン存在下でセレクションをかけて細胞増殖してきた細胞を不死化細胞として得る。これらの細胞をRANKL,M-CSF存在下で破骨細胞分化能を有するか検討する。昨年度の研究成果は、破骨細胞前駆細胞へのレンチウイルスベクターの導入高率は低く、RANKL、M-CSFにて誘導しても破骨細胞への分化が起こらないことがわかった。導入効率が低いためにフュージョンが起こらなかったのか、ウイルスベクターを導入する時期の問題なのか、またE6/E7の導入でよいのかは明らかではない。計画当初は、まずは不死化を目指したが、癌ウイルスを導入するのは、臨床応用には発展しないのではと考えている。このため、まずは研究の根本に立ち返り、破骨細胞誘導遺伝子を捜索してそれらの遺伝子のうちヒト破骨細胞前駆細胞に導入効率の高いものを導入するのが現実的であると考えた。破骨細胞誘導遺伝子は、様々な方法でスクリーニングされているが、我々はこれまでとは異なる遺伝子の発見を目指すため、マウスの坐骨神経切断による骨密度低下モデルを作成し、このモデルにおいて発現が上昇する遺伝子をピックアップし、それらをレンチウイルスベクターにてヒトは骨細胞前駆細胞に導入しようと考えている。この方法は、廃用性症候群等の筋萎縮時にどのような遺伝子が発現して破骨細胞を活性化するのかの解明となり、さらにその遺伝子を導入して作成された破骨細胞に対しての治療薬は、廃用性症候群の新たな治療薬の開発につながると考えている。
|