我々は、破骨細胞が過剰に活性化されている状況下で、骨吸収が進むことに着目して、新たな治療薬を開発するため、ヒト破骨細胞を不活化することを目標としている。破骨細胞分化を解析するにあたっては、初代培養系に加えてマウスではRaw264.7細胞株を用いた解析が広く行われているが、ヒトにおいては不死化したヒト破骨細胞株が存在しないため作製することとした。これまでパピローマウイルスE6/E7をヒト骨髄由来単球細胞へレンチウイルスで導入することを試みたが、導入効率の低さのためか、あるいは効果的な不死化が起こらなかったためか、不死化細胞株の樹立には至らなかった。そこで、不死化の手法を変更し、マウスで樹立されている細胞株Raw264.7細胞より不死化因子を同定し、ヒト細胞へ導入する方法へ切り替えることとした。Raw264.7細胞はAbelson virusによる白血病細胞株でありvAblの恒常的な活性化により不死化していると考えられる。そこで、Abelson virusのcDNAの取得を試み、全長クローンの同定に成功した。Direct sequence法を用いて遺伝子配列の解析を行ったところ、遺伝子配列には問題がないことが確認された。cDNAの両端に制限酵素サイトを付して、レトロウイルスベクターへの挿入を試み、レトロウイルスベクターを作成して、ヒト由来単球細胞へ遺伝子導入を試みたが、やはり導入効率は低かった。
|