研究概要 |
現在、日常診療の場において骨密度測定が骨折リスクの評価に広く用いられている。しかし、骨密度が高いにもかかわらず骨折をきたす症例の存在などから、骨密度以外の骨強度因子である「骨質」の重要性が指摘されている。そこで今回は、同一個体から骨,皮膚,尿,血液を採取し、各検体間のAGEs架橋(ペントシジン)量の相関性を検証する。さらに骨と類似したコラーゲンの老化過程をとる皮膚に着目し、非侵襲的な皮膚蛍光AGEs測定装置(Skin/fluorescence AGEs Reader, DiagnOptics)によるAGEs評価と、AGEsの代表的構造体であるペントシジン量との相関を検証し、間接的な骨コラーゲンのAGEs化度の評価法として有用性であるか否かを検討した。 整形外科において手術施行予定の症例のうち、閉経後女性もしくは50歳以降の男性で、本研究の同意が得られた患者を対象とした。手術適応は、従来通り臨床症状、画像所見、患者の希望などから総合的に判断した。 血中と尿中のペントシジン量は正の相関、尿中ペントシジン量は骨や皮膚のペントシジン量と有意な正の相関を示した。皮膚AGEsリーダー値は、皮膚ペントシジンと強い相関を示したが、骨ベントシジンとの相関は低かった。 以上の結果より、各検体間のペントシジン値は互いに相関していたことから、組織のAGEs化は、酸化ストレスや糖化の程度に応じて同一個体内では同程度に生じた可能性があるといえる。骨質因子である骨コラーゲンのAGEs化は、尿中ペントシジン測定値が最も強く、間接的な骨質低下指標として有用となる可能性を示唆している。
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