本研究の目的は、酸化低密度リポ蛋白(酸化LDL)が軟骨組織の老化変性に関与することを、レクチン様酸化LDL受容体―1(LOX-1)およびLDL受容体knockout mouseを用いてin vivoで明らかにすることである. トレッドミルを用いてCB57/BL6マウスに強制走行を行わせると、非侵襲的に変形性膝関節症(膝OA)を作成できることを明らかにした.すなわち、週3回、二週間に1Kmの走行にて走行開始後には膝関節外側有意の軟骨変性、半月板肥大骨化、十字靭帯変性が生じること、また、これらの変化は走行週数、一回当たり走行距離により調節可能であり、優れた変形性関節症モデルマウスであることを示した.そこでLOX-1 knockout-mouseを強制走行させ、膝軟骨変性における酸化LDL・LOX-1系の関与を明らかにすることを試みたが、両マウスの変形の程度において2週間の走行では有意な差は無かった.また、wild typeとknockout-mouseを、6ヶ月、1年、1.5年と長期間自然飼育を行い膝関節変性の状況を観察した.その結果、飼育開始後1年および1.5年において大腿骨内側顆軟骨の変性がknockout-mouseにおいて有意に抑制されており、LOX-1と軟骨変性の関連性が示唆された.さらに、Zymosanの関節内投与による実験的関節炎モデルマウスにおいても、LOX-1 knockoutにおいて滑膜炎症、軟骨変性の抑制が認められ、LOX-1と関節症変化の関連が示された. 以上の結果より、酸化LDL、および酸化LDLの受容体LOX-1は血管内皮細胞の老化促進因子であるのみならず軟骨細胞の老化変性にも関与を示し、変形性関節症の薬物的治療に新たな可能性を示すことができたと考える.
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