研究課題/領域番号 |
22591704
|
研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
廣田 弘毅 富山大学, 大学院医学薬学研究部(医学), 准教授 (30218854)
|
研究期間 (年度) |
2010-04-01 – 2014-03-31
|
キーワード | 認知症 / 全身麻酔 / セボフルラン / 疾患モデルマウス / 海馬 / 抑制性シナプス伝達 / GABA / 再取り込み |
研究概要 |
臨床において認知症患者を麻酔する機会は増加しつつあるが,認知症による全身麻酔作用の修飾は明らかでない.全身麻酔薬作用に及ぼす認知症の影響を検討する目的で,記憶学習障害を来すモデルマウスSAM-P8(16週齡)およびコントロールとしてSAM-R1(16週齡,記憶学習障害なし)を用いた検討を行った.SAMモデルマウスは,アルツハイマー病と類似した病理変化を来すことが知られている.麻酔用チャンバーでSAM-P8およびR1に揮発性麻酔薬セボフルランを吸入させたところ,正向反射が失われるまでの時間(LORR)はP8の方がR1よりも短かった.次に海馬スライス標本を用いて電気生理学的検討を行った.マウスを麻酔後断頭して海馬を摘出し,海馬スライス標本を作成した.標本は,Roth教授(海外共同研究者)と共同開発した脳スライス用チャンバーに移し,サーキュレータを用いて37℃に保った.刺激電極および記録電極は,マイクロマニピュレーターを用いて操作した.シナプス電位は電気刺激装置を用いて誘発し,微小電極増幅器で観察した.実験は除振台上で行った.海馬白板にトレインの電気刺激(n=1000)を与えることにより抑制性介在ニューロンからの抑制性シナプス伝達物質(GABA)を強制的に放出させ,放出準備状態のシナプス小胞を一時的に枯渇させることができる.枯渇からの回復を観察することによりGARAの再取り込みを検討した.セボフルランはGABA再取り込みを抑制したが,その抑制の程度はR1よりもP8においてより顕著であった.当該研究から認知症モデルマウスにおいて揮発性麻酔薬の作用が増強することがしめされていたが,これは認知症におけるシナプス前終末におけるGABA再取り込みの抑制によると考えられた.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(理由)認知症モデルマウスを用いた海馬スライス標本モデルの作製に成功し,シナプス伝達の電気生理学的検討が予定どおり進んでいる.今後は,このモデルを用いて,さまざまな麻酔薬のデータを採取し,結果を解析・考察する.
|
今後の研究の推進方策 |
当初は,アルツハイマーモデルとしてPS2マウスを使用する予定であったが,SAMマウスにおいても同様の病態を示すことがわかった.電気生理学的理由からSAMの方が信頼性の高い結果が得られるため,今後もSAMを用いて検討を行う予定である.今後は,新しい揮発性麻酔薬デスフルランや静脈麻酔薬プロポフォールについて検討を重ねる.
|