平成22年度は妊娠中のマウスに対する1%イソフルランの6時間暴露が出産後の仔マウスの脳高次機能と脳組織構造に及ぼす影響の解析を行った。 方法:イソフルラン暴露はC57BLマウスを妊娠10日、17日目に特製ボックスに飼育ゲージごといれて、麻酔ガスモニター下に酸素濃度50%でイソフルラン1%を6時間吸入させ、対照は50%酸素投与て行った。その後生後8週間目に、仔マウスで8方向迷路による空間認知記憶学習とヘマトキシン・エオジン染色およびシナプトフィジン免疫染色で脳組織学的検討を行った。 結果:妊娠17日目に6時間の1%イソフルランで暴露され、出産した雄の仔マウスの空間認知学習機能は低下し、シナプトフィジン免疫染色性が大脳皮質および海馬で低下していた。このことは妊娠中のイソフルラン暴露が仔の脳シナプト形成が低下していたことを示している。一方、妊娠10日目での6時間の1%イソフルラン暴露では空間認知学習機能およびシナプトフィジン免疫染色性は変化しなかった。 考察:この結果から、妊娠中の子宮内での仔の脳神経発達が最高になる妊娠後期での吸入麻酔薬の暴露が出生後の仔の脳神経発達に影響を与えることを初めて証明した。このことは現在行われている妊娠中の胎児麻酔や非妊娠手術での麻酔方法の再検討が必要であることを示している。次年度は、妊娠中の吸入麻酔薬の暴露による脳神経発達障害の原因を脳神経成長促進因子の面から検討していく予定である。
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