1.海馬神経細胞内Ca濃度:昨年度までの研究により、GABAA受容体作動薬およびミダゾラムは、4日齢、7日齢海馬スライスではCA3領域の細胞内Ca濃度増加をもたらし、これらの効果はGABAA受容体阻害薬bicuculineおよびNKCC1阻害薬であるbumetanide前処置によって拮抗されることを明らかにした。今年度は、電位依存性Caチャネルの阻害薬であるnicardipine前処置の効果を調べた。その結果、GABAA受容体作動薬およびミダゾラムによる細胞内Ca濃度増加はnicardipine前処置により拮抗された。したがって、この細胞内Ca濃度増加にはGABAA受容体刺激に引き続く脱分極と電位依存性Caチャネル開口が関与することがわかった。 2.電気的活動:7日齢海馬スライスを用いて電気刺激によるpopulation spike測定を行い、反回性抑制の有無とミダゾラムの影響を検討した。しかし、対照状態での測定値が経時的に変化してしまい、ミダゾラムの効果を明らかにするには至らなかった。 3.Phosphorylated cAMP-response element binding protein (pCREB)免疫染色:pCREBは神経細胞の興奮と細胞内Ca濃度増加に伴って発現する転写因子である。ミダゾラム腹腔内投与後に断頭し、海馬および視床のpCREB免疫染色を行い、日齢およびbumetanide前投与の効果を解析した。ミダゾラム投与は7日齢において海馬pCREB陽性細胞数を増加させたが、28日齢では変化を生じなかった。7日齢でのpCREB増加はbumetanide前処置によって阻害された。この結果は、Ca imagingの結果と一致し、ミダゾラムがin vivoでも新生児ラット海馬ニューロンに興奮作用をもたらすことを示唆する。
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