研究概要 |
ラット脊髄虚血モデルを用い、ミノサイクリン前投与に対する効果を検討した。脊髄虚血は左大腿動脈から4Frフォガティーカテーテルを挿入し、下行大動脈を遮断し、左総頸動脈からの脱血により中枢側の血圧を40mmHgに維持した。脊髄虚血は10分とした。ラットは、コントロール群(n=11)、ミノサイクリン群(n=13)、sham群(n=12)に分類した。生理食塩水又はミノサイクリンを虚血12時間前から3日間、12時間毎に腹腔内投与した。再還流72時間後に後肢運動機能をBasso, Beattie, Bresnahan (BBB) score (J Neurotrauma 1995 ; 12 : 1-21)にて評価し、10%ホルマリンにて還流を行い、L5の脊髄切片を採取した。組織学的検討はHE染色を用い、灰白質傷害として正常神経細胞数を、白質傷害として白質の空胞化率を算出した。活性化ミクログリアについてはiba-1免疫染色を用い、その陽性細胞数を計測した。 BBBスコアはコントロール群に比べ、ミノサイクリン群で有意に良好であった(P<0.05)。正常神経細胞数はコントロール群に比べ、ミノサイクリン群で有意に多かった(P<0.05)。白質の空胞化率はコントロール群に比べ、ミノサイクリン群で有意に少なかった(P<0.05)。活性化ミクログリアの指標であるiba-1陽性細胞はコントロール群に比べ、ミノサイクリン群で有意に少なかった(P<0.05)。 以上の結果より、ミノサイクリンの前投与はラット脊髄虚血後の後肢運動機能障害、灰白質傷害、白質傷害を改善することが明らかになった。また、この効果はミクログリアの活性化の抑制が関与している可能性が示唆された。
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