本研究ではFRET解析という手法を用い、Bidの分解を可視化することを目標とした。Bidは、アポトーシスが発現する際にカスパーゼにより切断されるタンパクである。このタンパクの両端にCFPおよびYFPを付けたものがFRET現象(蛍光共鳴エネルギー移動、Fluorescence resonance energy transfer)を起こす。このCFPおよびYFPという二つの異なる励起光を発生させるprobeをplasmidを用いて細胞内に発現させ、このタンパクが分解されると励起光に変化が出るのでBid分解を光の変化で捉えることができる。初代ラット海馬培養細胞を35mmディッシュに調整し、30分のOGD(無酸素無糖培養)にてapoptosisを起こし、120分のOGDにてnecrosisを起こしたものを観察対象とした。これまでの検討では、FRETの変化は細胞間差があり、あるいは細胞内のミトコンドリア間においても時間経過がまちまちであることがわかってきた。しかし、これまでFRET解析により得られた画像は、両者を正確に重ね合わせ、さらに定量分析することができなかったため詳細な検討ができなかったが、今回導入したソフトであるmetamorphにより画像解析が格段に向上し、時間的空間的分解能が向上した。今後、アポトーシスの時間経過におけるBid切断の過程を明らかにすることの道筋が見えてきた。また、このBid切断過程におけるミトコンドリア膜電位も検討の対象であるが、電位依存性色素TMREにて蛍光強度の変化により定量化した画像も同時に取得可能であり、これらの画像処理技術を用いることにより、ミトコンドリア膜電位とBidの切断の関係を明らかにし、虚血に伴うアポトーシスの過程を明らかにしつつある。
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