以前の麻酔科臨床経験、すなわち、教書には神経が存在しないと思われる患者部位であるにも拘わらず圧痛を訴えた患者症例を経験して以来、私、研究者、齋藤敏之は「脊髄神経後枝の形態は現在の知識と異なっている。」と考え、基礎的知識の訂正を目的として1991年から脊髄神経後枝の研究を継続して遂行している。 2010年からは「脊柱後方の脊髄神経の走行の三次元的構造解析」を研究テーマに掲げ、複雑な神経の分枝形態を三次元的にとらえて、全体の構造を出来るだけ詳細に記録すべく研究を継続した。今回の研究期間のうち、研究開始当初は所見のスケッチや写真によるデータ確保の後、罫線上で三次元化するという旧態依然の方法でデータを保存していたが、学会発表で知り合ったスイスの解剖学者Sprumont P博士の進めに従ってレーザー・スキャナーを導入し、データーを他覚的に処理する様になってからは、研究結果の他覚的評価が上がった様に思われる。平成24年度には当初の研究目的の研究データはほとんど取り終わっており、結果報告としても論文作成に終始した。研究結果は教科書を書き換えるほどの内容となっており、自信があったため、世界的に読者の多いAnesthesiology誌に投稿した。内容の検定が極めて詳細であった外、英文文法検定も詳細で、英文完成までに米国翻訳会社に4回の添削を校正・再投稿の度に必要とした。この結果、本年一月”Analysis of the Posterior Ramus of the Lumbar Spinal Nerve”なる表題で腰部での脊髄神経後枝の三次元構造の解析結果を雑誌Anesthesiology誌の2013年1月号に掲載することができた。本論文が本課題の研究結果である。
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