研究概要 |
高血糖状態では酸化ストレスが進行している。本研究の目的は、ラット全脳虚血(心肺停止)モデルを用いて、高血糖状態では脳灰白質および白質傷害が増悪するかどうかを調べ、その増悪に対してHMGB1(high mobility group box1)およびRAGEs(receptor for advanced glycation end product)の関与を調べることである。本年度は、慢性高血糖ラットの作成と、ラット心肺停止モデルの作成を行った。 慢性高血糖ラット作成) 雄ウィスターラットを用い、糖尿病ラットはストレプトゾシンを皮下投与し作成した。毎日血糖変化を観察し、投与一週間後に高血糖ラットとして使用した。 ラット心肺停止モデル) ラットをイソフルラン麻酔下に気管内挿管し人工呼吸に乗せ、尾静脈・大腿動脈にカニュレーションを行った。ロクロニウム投与し、人工呼吸停止とエスモロール投与により一過性に心臓を停止させた。5分後に100%酸素換気し、ヘパリン、重炭酸、エピネフリンの混合液を注入し心拍を再開させた。心肺停止3日後、1週間後と2週間後に脳スライスを作成し、HMGB1およびRAGEの観察を行った。灰白質傷害の評価としてはクレシルバイオレット染色とMAP2免疫染色、神経軸索病変はβamybid precursor protein(β-APP)の免疫組織染色で観察した。 糖尿病ラットは、血糖値が有意に高く体重の減少が認められた。心肺蘇生後1週間で海馬CA1の神経細胞傷害が認められたが,2週間後にさらなる傷害の進行は認められなかった。神経軸索傷害は2週間後に認められた。糖尿病ラットは、虚血前にすでに正常血糖ラットに比べて、脳のHMGB1とRAGE発現の増加傾向が認められた。慢性高血糖により、虚血前にすでに脳傷害の進行している可能性が示唆された。
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