敗血症におけるvasopressin投与に対する心筋の反応性を解明した。 基礎研究 動物敗血症モデルとしてcecal ligation and puncture(CLP)ラットを実験材料とし、摘出した左心室の細胞懸濁液を作成して細胞収縮及び細胞内Ca2+濃度の測定を行った。プラチナ電極を用いて誘発させた細胞の収縮率は、還流液中のvasopressin 濃度との相関関係は認められなかった。しかしながら個体によっては濃度依存的に増加傾向を示すものもあり、モデルの敗血症の重篤度によって変化があることが示唆された。細胞内Ca2+濃度の測定は、fluo - 3AMが含まれたHEPES 溶液で感作処理した後、蛍光顕微鏡システムを使用し測定した。vasopressi濃度の違いで蛍光強度に差を認めることはできなかった。今回の研究の限りでは心筋の収縮に関してvasopressinの関与は明らかにされなかったが、その問題点としてCLPラットが均一の敗血症状態にならなかったこと、蛍光測定システムにおいて細胞への試薬の取り込みが不十分であったことなどが考えられた。 臨床研究 ICUで敗血症性ショックに対しvasopressin投与を開始された患者の心機能変化を観察した。エンドトキシン活性を測定し、敗血症の重症化のリスクを区分した。エンドトキシン活性による重症度とvasopressin投与前後の3D経食道エコーから得られる心筋収縮能変化の関連を調べたが、vasopressin投与による血圧の変化は認められても心筋収縮能変化をvasopressin投与によるものと認めることはできなかった。臨床においては、敗血症と同時に心不全・呼吸不全・腎不全などの合併症を生じているため、また、治療で他の強心剤が投与されている状況でエンドトキシン活性とvasopressin投与による心筋収縮変化を捉えきることはできなかった。
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