研究課題/領域番号 |
22591726
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研究機関 | 浜松医科大学 |
研究代表者 |
鈴木 明 浜松医科大学, 医学部附属病院, 講師 (30322142)
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キーワード | 呼吸音可視化 / 小児 / 片肺挿管 |
研究概要 |
平成22年度までに、生体の複数の部位から呼吸音を収録し、個々の呼吸音の大きさ、周波数分布、経時的変化を音声可視化装置で視覚化した。特に胸壁から呼吸音を収集するにあたり、聴診器の種類、設置位置、増幅装置の設定、および可視化装置のセッティングを工夫した。 平成23年度は、上記装置を小児気管挿管患者に適応し、呼吸回路内、食道聴診器、胸壁聴診器を用い呼吸音を収集し、各々を比較し臨床的に有用なパラメーターを検索した。成人と同様に胸壁からの呼吸音収集に際しての適切なセッティングを決定した。その後、胸壁に2つの聴診器を設置し小児の気管挿管においてしばしば問題になる片肺挿管が音声可視化装置で検出可能かどうか検討した。小児の気管挿管では、成人と異なり「カフなし気管チューブ」が用いられるため、体格に合わせたチューブサイズの選択が厳密に行われる必要があり、可視化装置の有用性検討に成人より多くの人数を要した。装置の有用性を検討するにあたり、呼吸音を医師が直接聴取して判断を下す場合を対称としてブラインド研究をおこなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
主に眼科で手術を受ける患者を対象に呼吸音を収集検討した。胸壁から呼吸音を収集するにあたっては、直径約3cmの小児用胸壁聴診器が最も適した器機である事がわかった。聴診器とマイクロフォンの接続部分から周囲の雑音が混入しやすい事が問題となったが、マイクロフォン背面に吸音材を設置したところ、音量が小さい小児の呼吸音でも収集が可能となった。音声可視化装置の基本的なセッティングは成人と同様で問題ない事がわかった。 前年度までの成人対象の研究では、音声を可視化することにより、医師の聴診より早く片肺挿管を見つける事が出来ることが明らかになったが、小児では、現在までの結果からは、医師による聴診と同様であろうと考えられる。今後計画した症例数までデータを収集し最終的な結果を出したいと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
成人と小児の胸壁から収集した呼吸音を音声可視化装置で分析した結果、両者とも片肺挿管時の呼吸音の左右差を医師の聴診と同等に判断できる事がわかった。この際、気管チューブ先端が気管分岐部にさしかかった際の気流変化によるものと考えられる雑音が、片肺挿管発見に重要である事が示唆された。気流の変化をより正確にかつ早くとらえれば、片肺挿管を未然にもしくは医師の聴診よりも十分早く検出する事ができる可能性がある。今後は、胸壁に加えて呼吸回路内、頚部、食道内での呼吸音を成人及び小児において同時収集し検討する予定である。 また、音声による胃管挿入の正確性の検討も行う予定であるが、胃管から空気を注入し聴診によって胃管挿入の判定を行う方法に関しては、欧米では一般的でないとの意見もあり、慎重に検討を進める必要がある。空気注入以外の何らかの音を発生させる方法を考える必要があるかもしれない。
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