平成23年度は、音声可視化装置を小児気管挿管患者に適用し、成人と同様に胸壁からの呼吸音収集に際しての適切なセッティングを決定した。その後、胸壁に2つの聴診器を設置し小児の気管挿管においてしばしば問題になる片肺挿管が音声可視化装置で検出可能かどうか検討した。小児の気管挿管では、成人と異なり「カフなし気管チューブ」が用いられるため、体格に合わせたチューブサイズの選択が厳密に行われる必要があり、可視化装置の有用性検討に成人より多くの人数を要した。以前の成人における検討で気管チューブが気管支に挿入される以前に音声可視化装置がその兆候をとらえることが可能である事がわかったが、平成24年度は、小児においても同様に気管チューブが気管支に挿入される以前にその兆候を見つけることが出来るか検討した。その結果、片肺挿管を通常の聴診器と同等に判別することは可能であるが、気管チューブ先端が気管支に挿入される以前にその兆候をとらえることは出来ない事がわかった。小児通常使用される、カフなし気管チューブでは、気管チューブ先端と気管分岐部の間に生じる吸気及び呼気の気流が気管チューブのカフと干渉することがないため、気管チューブ先端が気管支に接近しても呼吸音の変化が小さく、画像の変化としてとらえることが困難であった可能性がある。しかし、気管の長さが成人と比べ短く、気管チューブの挿入長をより厳密に調整する必要がある小児手術患者において、客観的な指標を提供できる音声可視化装置は有用であると考えられる。 小児における胃管の適切な挿入の確認に音声可視化装置を適用出来る可能性を検討したが、音を発生させるために胃管へ注射器を用いて空気を注入することを推奨しない国もあり本研究では適用を見送った。
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