敗血症によって生じる粘膜免疫応答の変化の解析。マウスに実験的敗血症(盲腸結紮穿孔腹膜炎モデル:以下CLPと略称)を用いて敗血症を誘導した。マウスに誘導するCLPの死亡率は最終的に20%程度となるように盲腸を穿孔する穴を27G針を用いて穿孔して調節した。このモデルと開腹した後すぐに閉腹する偽手術群を対照群として設定して比較を行った。粘膜免疫応答の評価としては粘膜アジュバントであるコレラ毒素と共にモデル抗原である鶏卵白アルブミン(以下OVAと略)を経鼻粘膜的に投与する経粘膜的免疫法に対する免疫応答の成立を測定するという方法をとった。成立するOVAに対する免疫応答はOVAに対する主要組織適合抗原複合体四量体(MHCテトラマー)を用いて細胞性免疫能を検出し、血中に検出されるOVA特異的免疫グロブリンによって液性免疫応答を評価した。CLP導入後1週間で敗血症から回復したマウスに対して2回経鼻粘膜的にOVAを免疫しその後1週間後に免疫応答を評価した。OVA特異的な免疫グロブリンに関してはCLP群で差は無かったのに対して、OVA特異的なテトラマー陽性細胞の数はCLP群で低下していた。さらにOVA特異的テトラマー陽性細胞で産生されるTh1型サイトカインであるIFN-gも低下していた。これらから敗血症によって粘膜免疫的な免疫の成立は低下が考えられた。この免疫機能低下が個体レベルでの生体防御に影響しているのかを評価するためにOVAを腫瘍抗原として持つEG7腫瘍細胞を接種しその増大を評価するという実験を行った。偽手術群では腫瘍の増大は抑制できたのに対して、CLP群ではOVAを腫瘍抗原として持つEG7の増大は抑制されなかった。また各群のマウスの脾細胞中のEG7に対する細胞傷害性を比較するとCLP群ではEG7への細胞傷害性は低下した。以上の結果から敗血症において粘膜免疫応答が低下することが示された
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