今回希少糖の投与方法や量により急性腎障害を軽減することができるかどうかを検討した。実験モデルは虚血再灌流モデル、シスプラチン腎障害モデルとあったが、重症度の高いシスプラチン腎障害モデルを選択し予備実験を行った。 結果 ①シスプラチン20mg/kg投与による腎障害の程度は、72時間後の血清BUNが23.7から84.3(mg/dl)、血清Crが0.06から0.31(mg/dl)へと上昇した。このモデルに対しシスプラチン投与後にD-alloseの腹腔内投与を行った系で検証した。D-allose200mg/kgの投与では有意な効果は認められなかったが、400mg/kg投与分では72時間後の血清BUNの上昇は55.7と33.9%抑制され、血清Crも0.19と38.7%の抑制作用を認めた。またTNF-αも52.9から41.0と22.5%の低減効果を認めた。②尿細管傷害を示すTubular injury scoreは4から1へと低減した③組織へ浸潤した好中球は1視野あたり1から0へと低減した。 これらのことからD-alloseのシスプラチンに起因する急性腎障害においては炎症系のカスケードを抑制し好中球に起因する組織障害を低減できたと考えられた。 このことを踏まえ投与方法をより臨床投与方法に近い経口摂取とした実験を行った。しかし腹腔内投与のような有意な炎症低減効果は認められなかった。原因としてはD-alloseの効果が濃度依存的なものである可能性があり、一日補給水分の中に溶解した方法では有効な濃度に達していなかったのではないかと思われる。今回D-alloseのシスプラチンによる急性腎障害に対する傷害抑制作用があることは示唆されたが、経口投与方法に関してはさらなる実験が必要である。
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