研究概要 |
胸部大動脈手術の重要な術後合併症に虚血性脊髄障害による対麻痺がある。一方、痙性対麻痺患者に、α2アドレナリン受容体アゴニスト(テルネリン)が有効との報告がある。今回、虚血性対麻痺のメカニズムの解明と治療の可能性を検討するため、虚血性脊髄障害に伴う痙性対麻痺へのα2アドレナリン受容体アゴニストが及ぼす鎮痙作用とそのメカニズムに関する研究を行った。痙性に対するNO代謝酵素阻害薬の効果も検討しチザニジンとの相加相乗効果の有無を検討した。 1) 一過性脊髄虚血後の神経膠細胞の増加と痙性対麻痺へのチザニジンの効果i)痙性対麻痺モデルの作成(当施設で施行可能):雄のSDラットを空気+イソフルラン麻酔後, 2F Fogatyカテーテルを左大腿動脈から挿入しカテーテルの先端バルーンを膨らませ大動脈を遮断し,同時に左内頚動脈から脱血し低血圧(40mmHg)にすることで10分間の脊髄虚血を行った.(Taira, Stroke 27:1850-8, 1996).虚血後麻酔から覚醒させ,痙性対麻痺を呈したラットを使用した.ii)虚血再灌流後の痙性対麻痺の評価とチザニジンの鎮痙効果をSpasticityMeterを用いて評価した.2)痙性対麻痺に対するTizおよび一酸化窒素代謝酵素阻害剤(NOS阻害薬)の効果は作成した脊髄虚血性対麻痺ラットにくも膜下カテーテル(薬物注入用カテーテル)を挿入し、後日くも膜下カテーテルからチザニジンを投与し,その前後の痙性対麻痺の変化を1)-ii)の方法で評価し、チザニジンによる鎮痙作用を再度確認したが、一酸化窒素代謝酵素阻害剤(NOS阻害薬)の効果を確認できなかった。
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