研究概要 |
平成23年度は脊髄刺激による疼痛緩和効果の責任部位を明らかにする目的で、下降性抑制系の起始核である青斑核(Locus ceruleus,noradrenergic)及び背側縫線核(Dorsal medial raphe,serotonergic)に対してそれぞれノルアドレナリン合成酵素であるDopamine β hydroxylase(DβH)、セロトニン合成酵素であるTryptophane Hydroxylase(TPH)と神経細胞の興奮の指標としてリン酸化cAMP response element binding protein(pCREB)に対する免疫2重染色を行った。生後10週の雄性SDラットに対し、左L5腰神経に対してSNLを行い、その1週間後にL3の椎弓切除を行い銀製の自家製刺激電極を先端部が腰膨大に達するように留置し、テスト刺激で患肢が収縮することを確認した。電極留置後1週間でauto von Frey装置により機械的刺激に対する患肢の過敏性を確認した後に50Hz、0.2ms、患肢が持続的に収縮する強度の約75%の刺激強度で1時間脊髄刺激を行い、機械的刺激に対する過敏性が減弱していることを確認の後、更に1.5~2時間脊髄刺激を加え、ペントバルビタール麻酔後還流固定し、脊髄及び脳幹部を摘出、後固定後薄切し組織学に用いた。コントロールとして神経障害のみを行ったSNLラット、全く何もしていないnaiveラットも同様に薄切標本にした。DβH,TPH,pCREBに対する免疫染色を行い、pCREBをRhodamine,DβH及びTPHをFITCで標識し、コンピュータによる画像取り込み後画像解析を行った。青班核においてはDβH及びpCREBはSNL及び脊髄刺激によっても有意な変化は見られなかったが、縫線核においてはSNLではnaiveと比較して有意なTPH及びpCREBの変化は見られないものの、脊髄刺激により有意にTPH陽性ニューロン及びpCREB陽性の細胞核が増加していた。この成果は2012年の北米麻酔科学会総会において発表された。
|