研究概要 |
平成24年度は、前年度から継続して脊髄刺激を行った神経障害性疼痛モデルラットの背側縫線核および青斑核における免疫組織学的検討を継続した。解析の結果、SNLラットの青斑核では、障害側でノルアドレナリン合成酵素(Dopamine beta hydroxylase: DbH)の染色性が反対側の約1.4倍増加していたのが、脊髄刺激により疼痛が抑制されたSNLラットではnaïveラットと同じレベルまで復していた。さらに脊髄におけるセロトニン、ノルアドレナリンそれぞれの合成酵素の発現量をウエスタンブロット法により定量した。脊髄刺激電極を留置したSNLモデルラットに対し、脊髄刺激を行い疼痛反応が減弱したラットに対し3時間の脊髄刺激を与え、ペントバルビタールによる深麻酔下に冷却生理食塩水で経心的に還流し、腰膨大部を摘出した後に脊髄後角を左右に分けて採取しウエスタンブロットのサンプルとした。対照群として、脊髄刺激を行わなかったSNLラットを用いた。神経障害性疼痛モデルラットにおいて、脊髄刺激を行った群とそうでない群では、脊髄後角におけるセロトニン合成酵素(Tryptophan hydroxylase: TPH)およびDbHの発現量は変化していなかったため、脳幹部における免疫組織学的検討と合わせると、脊髄刺激法による脊髄での鎮痛作用には、セロトニン、ノルアドレナリンの双方が関与するが、これら神経伝達物質は脊髄で産生の増加が見られるのではなく、それぞれの中枢での産生が増加し、その結果脊髄での放出が増加しているということが示唆された。 本研究の成果は、国際疼痛学会総会(Pain 2012,Milano, Italy)で発表され、現在は英文学術誌への投稿準備中である。
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