ビタミンD欠乏は、感染症や癌などの種々の病態の重症度との関連が示されてきた。心臓血管領域においても、心血管病の発生や重症患者の死亡率増加と関連があること指摘された。本研究の目的は、心臓血管外科手術患者の術前の重症度を重症度スコアおよび臨床因子により評価し、血清ビタミンD(25OHD)濃度、ビタミンD受容体遺伝子多型との関連(心臓血管疾患患者でFokI C/Cを持つ患者は他のC/TおよびT/Tと比較して重症度が低いという仮説)について解析することであった。のべ260人の心臓血管手術患者に対し、麻酔導入時に採血を行い、上記について検討した。結果は、種々の臨床的因子およびリスクスコアおよび重症度スコアの中で、術前の心臓血管外科患者の術前リスク因子評価に最も一般的なEuro scoreや術後のICU入室時の重症患者スコアであるAPACHE IIスコアは、ビタミンD濃度が低下するほど上昇した。遺伝子多型の解析ではビタミンFokI TT typeではそれ以外と比べてEFの低下が優位差を持って認められた。 この結果は、心臓血管外科領域において、ビタミンD濃度の低下と手術リスクや重症度スコアの上昇ととの関連を示したという点で意義が深い。今後、さらに症例数を増やすとともに、ビタミンDの周術期の予防的内服に関する介入研究を計画するにあたり、十分な基礎データを提供した。
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