研究概要 |
Cold Allodyniaは難治性神経障害性疼痛であるComplex Regional Pain Syndromeや頚髄症、中心性脊髄症などの脊椎・脊髄疾患において、しばしば軽い触刺激で痛みを生じるTactile Allodyniaと同時に出現する。治療に抗けいれん薬や抗鬱薬などの鎮痛補助薬が用いられるがその効果は乏しく、長期にわたって生活に支障を来す。基礎研究でメカニズムについては後根神経節細胞に発現している温度受容体やATP受容体の活性化や脊髄後角レベルの関与が指摘されており、これらに作用する薬物により痛みが緩和できる可能性が考えられている。我々の神経障害性疼痛患者における臨床経験から、熱伝導の少ないプラスチックなどではあまり痛みが生じないのに対して、同じ温度の金属では強い痛みを生じることから、皮膚における熱の移動速度(熱流束)が冷痛覚過敏に大きく関与しているものと予測できる。そこでヒト(健常者、患者)を用いて、温度変化のパターンによって温度感覚経験がどのように変化するかについて調査し、同時に電気生理学的な手法を併せて行うことで、関連する一次感覚線維のタイプや温度受容体の役割を解明していくことが本研究の目的である。本年度では,現有のペルチエ素子を用いた冷温刺激装置によって、手掌部の皮膚温度を下げていき、痛み感覚が生じたときの皮膚温度と熱流束の関係について検討した。冷却温度を一定とした場合、ペルチエ素子と皮膚との間に生じる熱流束が大きいほど高い皮膚温度で痛み感覚が引き起こされる結果となった。このことから熱流束が大きければ皮膚温度の変化が小さくとも痛み感覚を引き起こす可能性が考えられ,痛み評価における熱流束計測の必要性がうかがえる。この結果を、第33回日本疼痛学会にて発表を行った。
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