研究課題/領域番号 |
22591755
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研究機関 | 産業医科大学 |
研究代表者 |
川崎 貴士 産業医科大学, 医学部, 准教授 (60299633)
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研究分担者 |
岡本 好司 産業医科大学, 医学部, 非常勤医師 (50248572)
佐多 竹良 産業医科大学, 医学部, 教授 (60128030)
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キーワード | 外科的侵襲 / 臓器障害 / 合併症 / トロンボモジュリン |
研究概要 |
外科的侵襲が免疫能抑制、臓器障害を惹起する機序の解明をおこない、それを制御する戦略を開発し、合併症の発生、死亡率の低下を図ることがこの研究の目的である。マウス外科的侵襲(外傷出血)モデルを用いて検討し、将来、臨床応用可能な戦略を開発する。平成23年度は、トロンボモジュリン(TM)の効果を中心に研究を行なった。 C3H/HeNマウス(male,8-10 weeksold、weighing 20-25g)を使用し外傷出血モデル作成後、Recombinant human soluble TM(ART-123:1mg/kg、静注)を蘇生開始時に投与した。薬物投与しない動物には、同量の生理食塩水を注射した。蘇生後、様々なタイムサイクルで麻酔下に血液、臓器を採取した。 外傷出血により血中の炎症メディエーター(TNF-alpha、IL-6、HMGB1)濃度は上昇した。また、肺のMPO活性は増加し、Wet-Dry weight ratioも増加した。このことから、外傷出血により肺への好中球集積が起き、炎症を惹起していることが推測された。さらに血漿AST、ALT濃度も著明に増加し、肝障害が発生していることも明らかになった。肝細胞免疫染色による検討では、肝組織でのHMGB1発現が外傷出血後、亢進していることがわかった。TMを蘇生開始時に投与したマウスでは、血中の炎症メディエーター濃度が著明に低下し、肺MPO活性、Wet-Dry weight ratioも改善した。また、血中肝逸脱酵素濃度上昇が抑制され、肝細胞のHMGB1発現も抑制された。 平成23年度の研究により、TM処理により外科的侵襲による臓器障害発生が改善されることがわかった。TMが外科的侵襲による臓器障害予防戦略の候補として有効である可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
外科的侵襲による臓器障害発生の機序については解明が進んでいる。免疫能抑制についても、先天性免疫を担当するマクロファージ、好中球、樹状細胞機能について研究を進めている。予防戦略開発については、トロンボモジュリンの有効性が示唆される結果を得ている。
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今後の研究の推進方策 |
免疫能、臓器機能を維持することが外科的侵襲後の合併症予防に重要と考えられる。今後も研究計画に則り、外科的侵襲(外傷出血・熱傷)による肺、肝での免疫能・臓器機能の変化、脾樹状細胞機能の変化、そしてそれらの制御候補薬物について制御効果の検討を行う。先天性免疫を担当するマクロファージ、好中球、樹状細胞機能およびantimicrobial peptide発現を制御し、臓器不全を予防する戦略を開発したい。今後はbicalutamide処理による制御効果の検討を行う予定である。
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