研究概要 |
平成23年度は平成22年度に着手した前立腺周囲脂肪組織でのステロイド代謝の検討をさらに進め、20名の前立腺癌前立腺全摘出術症例より組織を採取して解析を行った。ステロイドホルモン代謝酵素遺伝子発現についてはCYP11A1、AKR1C、5-alpha reductase、steroid sulfatase、CYP19A1はほとんどの症例で発現しており、CYP17A1、HSD3Bについては症例により発現量のバラツキが多かったが発現を確認した。ステロイドホルモン定量ではprogesterone,androstenedione(AD),dehydroepiandrosterone,testosterone(T),dihydrotestosterone(DHT),estrone(E1),estradio1(E2)が存在し、代謝酵素の発現およびステロイド代謝経路に関わるステロイドホルモンの存在は、組織内で活性性ステロイドホルモンに至る代謝が行われていることを示唆する結果であった。ステロイドホルモン代謝を確認するために、同位体ラベルしたprogesteroneと脂肪組織をインキュベートし、代謝産物を定量したところ、17-OH progesterone、AD,Tへの代謝が検出され、脂肪組織内でCYP17によるホルモン代謝が行われることを確認した。この結果は脂肪組織が活性性ステロイドホルモンの前立腺への供給源として働き、前立腺疾患の発生・進展に関与する可能性を示す重要なものである。前立腺組織内でのエストロゲンを含む性ステロイド定量も併行して行い、前立腺組織内でのエストロゲン濃度はE1 22.1pg/g,E2 17.4pg/g,T 42.1pg/g,DHT 3.20ng/g(いずれも中央値)であった。前立腺組織の病理所見、組織内でのCYP19の発現との関連については次年度に解析する予定である。
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