本研究は、癌細胞において特異的に増殖し、蛍光蛋白(GFP)を発現させる新規の診断用アデノウイルスベクター製剤Telomescan(岡山大学において独自に開発)を用いて、膀胱癌に対する新たな体外・体内診断法を開発することを目的とした基盤研究である。 平成22年度は、体内・体外診断法の開発に関して、主に培養細胞を用いた研究を実施した。 1)膀胱癌培養細胞におけるhTERT mRNAの解析 各種膀胱癌細胞株よりRNAを抽出し、RT-PCR法にてhTERT mRNAの量を検討した。各膀胱癌細胞株の間では若干の差が認められるものの、膀胱癌細胞株では概ねTelomerase活性が高いことを確認した。 2)膀胱癌培養細胞におけるIn vitroでのTelomescanの診断効率の解析 各種膀胱癌細胞株に対し、Telomescanを様々なMOIで添加し、15分、30分、40分、2時間、24時間後に蛍光顕微鏡で観察した。Telomescanの添加1時間後で、Telomescanが増殖することによって蛍光蛋白GFPが産生され、各癌細胞での蛍光の確認ができるようになった。また、Telomescanの導入効率の検討・至適条件・検出法の設定を行った。 膀胱癌においてはTelomerase活性が高く認められる一方、Telomescanは癌細胞に特異性が高く、Telomeraseを標的としたTelomescanによる膀胱癌の診断は新規診断法として有用である可能性が高い。次年度より、実際の尿等の検体を用いて、その有効性を検討することとしている。Telomescanは、従来の膀胱癌診断法である尿細胞診よりも早期診断に役に立つ可能性があり、低侵襲の検査法としてのみならず膀胱癌の治療への応用が期待される。
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