研究概要 |
本年度は、前立腺癌細胞の生存・増殖・浸潤における放射線被曝線維芽細胞や脂肪細胞の影響を検討するため、癌細胞株(LNCap,PC-3,DU-145)をCollagen gel invasion assay systemを用いて、癌細胞株と成熟脂肪細胞、線維芽細胞(放射線照射の有無)と混合培養し、HE染色で検討した。放射線は間質細胞のみではなく、癌細胞株照射群についても検討した。その結果、PC3では脂肪組織片、成熟脂肪細胞、線維芽細胞とも培養2週間でゲル内への浸潤傾向がみられたが、線維芽細胞への放射線照射の有無では浸潤傾向の差は明らかでなかった。一方、LNCapでは放射線照射線維芽細胞との混合培養群で癌の増殖が促進される傾向があったが、いずれも、増殖能の染色、統計学的有意差を得るには至らなかった。対照群として、膀胱癌細胞株(RT4,EJ)についても検討を加えた。RT4では線維芽細胞との混合培養でも、浸潤傾向は明確でなく、被曝線維芽細胞との混合培養でも差はなかった。ところが、EJ細胞では脂肪組織片、成熟脂肪細胞、線維芽細胞との培養では被曝線維芽細胞との培養が最も浸潤傾向が強い傾向がみられた。これらの結果から、放射線治療後、残存した間質には癌増殖、浸潤能を惹起するポテンシャルがあることが示唆された。これらの放射線被曝間質細胞による現象が、遺伝子不安定性によるものか、またその可逆性、不可逆性にっき検討する予定である。
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