研究概要 |
我々はこれまで腎癌細胞株786-0におけるインターフェロンに対する抵抗性にSOCS3が関与していることを見出した。本研究の目的は腎癌が免疫機構から回避する手段の解明であるが、インターフェロン抵抗性の発現におけるSOCS3の関与を確認検討するために、SOCS3強制発現用プラスミドをSOCS3のcDNAカセットをpCIneoにクローニングすることにより作製した。このプラスミドをSOCS3の発現が786-0株よりも低いACHN細胞にトランスフェクションし細胞増殖能を検討したところSOCS3強制発現によりインターフェロンを加えたあとのACHNの細胞増殖抑制が解除された。また、786-0細胞を用いた腎癌皮下移植モデルにおいて腫瘍内SOCS3をsiRNAで抑制し、インターフェロンを投与した場合、腫瘍におけるアポトーシスに加え明らかな線維化および細胞浸潤を再確認した。また、786-0細胞ではインターフェロン投与後のhsa-mir-93が高値であった。このhsa-mir-93のターゲット遺伝子の候補の中にTRAIL受容体であるTNFRSF10Aが含まれていた。このhsa-mir-93はACHN細胞では低地であった。このhsa-mir-93発現とTRAILに対する反応性は逆相関していた。これらのことからインターフェロン抵抗性、NK細胞が発現するTRAILに対する抵抗性にSOCS3,hsa-mir-93が関与していることが強く示唆されるが最近このhas-mir-93はSTAT3もターゲットとする可能性が判ってきた。このSTAT3は癌細胞を増殖させる分子だが、SOCS3によって抑制される事が判っている。つまり腎癌の細胞増殖およびNK細胞からの免疫回避などに関与する分子の中心にSOCS3にhas-mir-93が関与している可能性が高まった,今後これらの分子のクロストークを詳細に解析する予定である。
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