1)AngIIおよびAT1によるアンドロゲンレセプターの発現調節:前立腺癌細胞株であるLNCaP細胞をAngIIで刺激したところ、アンドロゲンレセプター(AR)の発現が誘導された。さらに、AngIIの細胞膜レセプターであるAT1Rの発現を、siRNAで抑制すると、ウェスタンブロット法でARのタンパク発現は有意に抑えられた。また同時に転写因子であるNFkBやcMycなどのタンパク発現を調べてみると、siRNAを遺伝子導入したがん細胞では、それぞれ発現抑制されていることが確認された。AT1Rの発現をノックアウトしたマウスの前立腺でのAR遺伝子の発現を、RT-PCRで確認すると、AT1Rノックアウトマウスの方がコントロールマウスに比べ、約70%近く抑制されていることが分かった。 2)アンジオテンシンIIレセプターブロッカー(ARB)によるAR発現調整の解析:ARB投与したTRAPラットは有意に前立腺癌の発生が抑制されていた(Table1)。病理学的にも、ARB投与群の前立腺は間質の増大が認められ、アポトーシス所見も強く見られた。前立腺でのAR発現がARB投与群で有意に抑制されていることもウェスタンブロットで確認された。 3)前立腺癌に対するARBの抗腫瘍効果(臨床試験):前立腺全摘術後のPSA再発に対し、PSA: 0.2 ng/mL以上になった時点からARBを投与開始し、PSA上昇速度を測定した。その結果、ARB投与前に比べARB投与後はPSA上昇速度(PSA倍加時間)が2倍に遷延していることが統計的に確認された。 4)AT2およびAT4レセプターによる前立腺癌細胞におけるAR発現調節の解析:LNCaP細胞にAT2およびAT4レセプターのsiRNAをそれぞれ遺伝子導入し、AR発現をウェスタンブロットで調べた。その結果、両者ともAR発現が抑制されていることが確認された。
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