研究課題
近年、腎細胞癌に対し癌の進行において重要な働きをしている情報伝達系を標的とした分子標的薬が開発され臨床において成果を挙げていますが、その有効性が一過性であることも明らかになってきています。すなわち、標的とした一つ情報伝達系を抑えても、これをレスキューする別の情報伝達系が活性化され、癌細胞の進行が再び起こると考えられます。そこで、腎細胞癌に様々なストレスを加えた際の細胞内情報伝達系の変化をプロテオミクス解析という手法を用いて俯瞰的に解明することで癌細胞としての生存、進行を維持している情報伝達ネットワークを明らかにし、これを標的とした新たな治療法の開発へと繋げたいと考えています。平成22年度は横浜市立大学先端医科学センターを利用してマススペクトロメトリー(質量分析)を併用したプロテオミクス解析手法によって低酸素状態下で生じる培養腎癌細胞の細胞内の数千種類以上の蛋白の発現の変化を網羅的に観察しました。さらに、細胞内情報伝達系蛋白の多くが活性化されるとリン酸化されることを利用して、リン酸化蛋白のみを抽出しこれを前述のプロテオミクス解析を利用し、活性状態が変化する蛋白を同様に網羅的に観察しました。上記の方法によって、低酸素状態に対応する際に活性化が誘導される情報伝達系蛋白を数種類同定するとともに、この蛋白の活性を阻害することによって腎癌細胞の低酸素状態での増殖、生存が抑制されることを明らかにしました。
すべて 2010
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (1件) 図書 (1件)
BMC Cancer
巻: 10 ページ: 667
Clin Nucl Med.
巻: 35 ページ: 918-923