近年、腎細胞癌に対し癌の進行において重要な働きをしている情報伝達系を標的とした分子標的薬が開発され臨床において成果を挙げていますが、その有効性が一過性であることも明らかになってきています。すなわち、標的とした一つ情報伝達系を抑えても、これをレスキューする別の情報伝達系が活性化され、癌細胞の進行が再び起こると考えられます。そこで、腎細胞癌に様々なストレスを加えた際の細胞内情報伝達系の変化をプロテオミクス解析という手法を用いて俯瞰的に解明することで癌細胞としての生存、進行を維持している情報伝達ネットワークを明らかにし、これを標的とした新たな治療法の開発へと繋げたいと考えています。 平成24年度は昨年度までに行った培養腎癌細胞をサンプルとしたプロテオミクス解析において同定したストレス負荷によって発現が亢進する蛋白の中から数種類を選別し、癌細胞を用いてその発現や活性を阻害し機能を明らかにしました。その中でクリティカルな機能をもつものを更に絞り込み、動物モデルを用いて新規腎癌治療法の標的として 有効であるか、これを標的とした治療の臨床応用が可能であるか検討を行う。 また昨年度までに分子標的治療施行中の腎癌患者の血液サンプルのプロテオミクス解析を行っており、実際の臨 床において治療効果判定や予後予測に有用な血中バイオマーカー候補を数種類絞り込んでいる。本年は候補とな っているバイオマーカーの検出法の精度をあげるとともに、対象症例を拡げてその有用性の検討を行う。
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