研究概要 |
慢性炎症は前立腺癌を含む多くの癌の発症に大きな役割を担っている。炎症によりサイトカインが産生され、細胞の増殖、血管新生、組織再構築を誘導する。その過程で細胞のDNAに損傷を与え、発癌につながる一連の生物学的変化を引き起こすと考えられる。炎症は、酸化ストレスを引き起こし、前立腺上皮に障害を与える。酸化ストレスは細胞の老化や癌化に関わる重要なシグナルに密接に関与している。本研究において、酸化ストレスがDNA damage responseを介して前立腺癌細胞のアポトーシスを誘導し、その過程で男性ホルモンであるテストステロンがアポトーシスを促進的に働かせることを明らかにした。この機序として酸化ストレスはDNA damage response proteins(ataxia-telangiectasia-mutated kinase;ATM、histone H2A varian;H2AX、checkpoint kinase2;Chk2、P53)(2,3,4)を活性化していることがあきらかになった。前立腺の発癌や癌進展における酸化ストレス・ROSシグナル伝達系、とくにアンドロゲンシグナルとの関連はほとんど分かっていない。本研究ではさらにテストステロンを回復させた場合のDNA damage response関連蛋白質の発現変化をWestern blotting法で検討した結果、DNA damage responseの活性化がみられ、テストステロンの発がんにおける抑制の可能性が示唆された。
|