研究概要 |
再燃前立腺癌の治療にdocetaxelが導入されたことは臨床的には画期的であるが、その効果には限界がある。一方NFκBはホルモン非依存性前立腺癌の増殖・進展やdocetaxelの薬剤抵抗性に関与していることが示唆されている。本研究では、まずin vitroの実験系においてホルモン非依存性前立腺癌(PC3, DU145, JCA-1)に対するdocetaxelの抗腫瘍効果を検討した。0.8,4,20,100,500nMのdocetaxelを24時間作用させたときの細胞生存率(%)はコントロールを100(%)としたとき、DU145細胞では,102±2.7,95±1.3,59±1.3,37±1.3,27±0.7,JCA-1細胞では93±2.1,90±1.3,85±1.1,75±0.5,60±1.0,PC3細胞では93±2.3,88±2.1,78±2.8,59±2.0,52±2.2であり、濃度依存性の抗腫瘍効果が示された。また時間依存性も認められた。一方、2.5,5,10,20,40μg/ml濃度のNFκB阻害剤であるdihydroxymethylepoxyquinomicin(DHMEQ)を作用させたときの抗腫瘍効果(%)はDU145細胞では5%,8%,21%,45%,98%,JCA-1細胞では5%,9%,18%,70%,96%,PC3細胞では0%,3%,34%,92%,98%であり、濃度依存性に抗腫瘍効果が示された。また、時間依存性の抗腫瘍効果の増強も示された。さらには、DU145細胞において5μg/mlのDHMEQ単独治療は10%の抗腫瘍効果を示し、docetaxel 4nM単独の24時間後の抗腫瘍効果は5%、72時間後では51%であったが、5μg/mlのDHMEQを併用することにより24時間後34%、72時間後は84%に増強された。これらの結果から、再燃前立腺癌においてNFκB阻害剤であるDHMEQは抗腫瘍効果を示し、さらには標準治療であるdocetaxelの効果をDHMEQは増強しうることが示唆された。
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