NFκB阻害剤であるdihydroxymethylepoxyquinomicin (DHMEQ)の前立腺癌細胞株LNCaPならびに PC-3に対する抗腫瘍効果を検討した。LNCaP細胞では20μg/ml以上で、PC-3細胞では10μg/ml以上の濃度でDHMEQは有意な抗腫瘍効果を示した。Colony formation assayにて、放射線治療4GyにDHMEQを併用したとき、LNCaP細胞では2.5μg/ml のDHMEQを、PC-3細胞では5μg/mlのDHMEQを併用したときは放射線単独より有意に抗腫瘍効果が増強された。Electrophoresis mobility shift assayでは、両細胞においては放射線治療後4時間後にNF-κB活性が上昇し、5μg/mlのDHMEQによりNF-κB活性の上昇が抑制された。Cell cycleに及ぼす影響を検討してみると、両細胞において4Gyの放射線治療により誘導されるG2/M arrestの割合は、無処置群やDHMEQ単独群のそれらにくらべて高く、さらには放射線治療にDHMEQを併用することによりG2/M arrestの割合は放射線治療単独に比べてさらに高まった。LNCaP細胞ではp53、p21の発現が4Gyの放射線治療で増強され、DHMEQを併用することでさらにその発現が増強した。次いで、PC-3 細胞をヌードマウスの背部に移植し、放射線8Gyを2回に分けて照射し、DHMEQ 4 mg/kgを腹腔内投与した。放射線治療とDHMEQ併用群では、無治療群、DHMEQ単独群、放射線単独群に比べて有意に腫瘍の大きさが小さかった。今回の検討により前立腺癌細胞において放射線治療によりNF-κB活性が増強され、DHMEQによりその増強されたNF-κB活性が抑制され、抗腫瘍効果が増強されると考えられた。
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