前立腺特異的PTENノックアウトマウスの準備。loxp配列で標識されたPTEN-floxマウスとPSA-Creマウスを交配することによって得られたPTEN^<loxp>/PSA^<cre>ヘテロマウスより前立腺でのみPTENが欠失したPTENノックアウトhomoマウスを恒常的にBreedできるように動物実験室と共同で約150匹のマウスを交配維持するようにした。 本年度は(1)チロシンキナーゼ阻害剤のソラフェニブ(2)ステロイド性抗アンドロゲン剤の酢酸クロルマジノン(3)mTOR阻害剤のエベロリムスの3つの分子を用いてchemopreventionおよびinterventionの治療実験を行った。結果:(1)まずソラフェニブの毒性は認められず、泌尿生殖器重量が減少したことから、前立腺の増殖に影響を与えることがわかった。また、前立腺の正常領域・PIN領域が増加傾向になったのに比較し、癌領域は減少傾向であり、各種免疫染色により、癌細胞増殖を抑制し、アポトーシスを誘導していた。(2)酢酸クロルマジノンの毒性は投与群の肝重量の若干の増加がみられるものの退場変化に影響なく、認められないと思われた。前立腺サイズの著名な減少を認め、投与期間の長さに依存していた。酢酸クロルマジノン投与により、細胞核におけるARの発現が有意抑制されており、細胞増殖の抑制とアポトーシスの増加を招くことが明らかとなった。以上より、酢酸クロルマジノンは前立腺癌のchemopreventionに有用であることが示唆された。(3)エベロリムス投与により前立腺癌の発生率が低下し、chemopreventionに有用であった。また酢酸クロルマジノンと併用することで明らかな腫瘍増殖抑制を認め、アポトーシスを誘導していた。これらの結果については、2011年のアメリカ癌学会で発表する予定である。
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