平成24年度の研究の主実験として、蛍光PEG修飾フラーレンの作製および体内での集積状態を再検討することを目標に定めた。蛍光PEG修飾フラーレンに関しては、蛍光物質とPEGフラーレンの濃度反応比を4:1の割合で反応させ化合物を用いて、PC-3同所性前立腺癌モデルの尾静脈に投与したところ、移植癌領域への効率的な集積が確認できた。一方、C4-2同所性前立腺癌モデルを用いて行ったところ、組織内での試薬の安定性が得られず、再現性を確認するために、PC-3同所性前立腺癌モデルを用いた実験を再度新任地で施行したが、旧勤務地で得られた結果の再現性が得られなかった。以上の問題点に関しては、1年以上前から関係者と協議したうえで、解決策を模索しているが未だ解決策が得られない状況である。したがって、In vivoでの実験に関する検討については当面は先送りすることに決定し、市販の鶏肉にPEGフラーレンを局所注入し、収束超音波を照射した際のキャビテーション効果を検討する実験を行った。超音波の発生源として,アクリル水槽に固定された開口径80 mm,焦点距離80 mmの凹面型PZTトランスデューサーを用いた.PZT素子は共振周波数550 kHzのものを用意した.その結果、PEGフラーレン局所注射した鶏肉部分においては、HIFUによる凝固壊死効果がより増強されることが示された。一方で、Renca肺転移モデルを用いたPEGフラーレンとHIFU併用による抗腫瘍効果の検討に関しては、上記の実験の遅れの問題もあり、現時点では肺転移モデル作製の再現性チェックにとどまっているが、この過程に関しては問題がなく、体内集積性実験の問題が解決され次第、並行して実験を進める方針である。
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