本研究の目的は、ルシフェラーゼおよびEGFP(Green Fluorescent Protein)を利用した感度と特異性の高いNFkBの活性化を測定することの可能なリポータシステム(NATシステム:NFkB-activated transgene system)を遺伝子導入した培養尿路上皮細胞を用いて、間質性膀胱炎(IC:interstitial cystitis)患者の尿を用いた簡便なIC診断システムを確立することである。 今年度の研究実施計画としては、まず、IC患者への書面による同意書を得た後に尿を採取した。同様に間質性膀胱炎をはじめとする下部尿路疾患を有さない健常者の尿を、年齢、性別をマッチする群から採取し、先に作製したNATシステムを導入された培養尿路上皮細胞に加えてNF-kB活性の変化を定量的に、紫外線照射によるGFPの蛍光、またはルシフェリン添加による発光を利用して、イメージング装置を用いて観察した。また、IC患者の治療前後の自覚的症状(疼痛レベルおよび排尿回数)とNF-kB活性の変化を比較検討し、このシステムによる診断システムが治療効果判定においても有効であるか評価した。 その結果、IC患者から採種した尿によりリポータシステムのNF-kB活性が確認され、活性化の程度はIC患者の重症度と相関することが考えられた。また、治療効果の有無により治療前後のNF-kB活性に変化がみられた。 従って、間質性膀胱炎の治療における新しい診断システムが、簡便な診断の開発につながり、より多くの患者の救済の端緒となる可能性があった。
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