平成24年度は、平成24年度に収集した淋菌臨床分離株222株の再同定とこれら菌株に対するセフェキシム (CFIX)、セフトリアキソン (CTRX)、レボフロキサシン (LVFX)、アジスロマイシン (AZM)の発育阻止濃度(MIC)を測定した。CFIXに対しては約18%の菌株で感受性の低下が、LVFXに対しては80%の菌株で耐性化が認められた。CTRXについては、すべての株が0.125 μg/ml以下であった。AZMに関しては、MIC 16 μg/mlの1株を認めたものの、50%および90%の菌株の発育を抑制する濃度、MIC50とMIC90は、0.25 μg/mlと1 μg/mlであった。2000年代前半の臨床分離菌株の感受性と比較して感受性の低下が観察されているが、平成23年度と比較して全体での耐性化は進んでいない。また、近年、ヨーロッパおよび南米で観察されているAZM高度耐性菌は分離されなかった。 AZMの耐性化機序の解析は、平成21年度から平成24年度に収集した淋菌臨床分離株を対象として行った。MICが4 μg/mlの2株と16 μg/mlの2株で23S rRNA遺伝子のallele 1からallele 4のすべてにおいて遺伝子変化を認め、MICが16 μg/mlの1株でallele 1、allele 2とallele 4に遺伝子変化を認めた。さらに、MICが1 μg/mlの1株と2 μg/mlの1株で2カ所のalleleに遺伝子変化を認めた。ただし、海外で報告されているAZM高度耐性菌における23S rRNA遺伝子の変異とは異なる部位の変異であった。 日本においては、AZM高度耐性菌の出現の報告は現時点では無いが、本研究でAZMに対する中等度耐性菌が既に出現していることを明らかにした。さらに、その耐性機序として23S rRNA遺伝子の変異であることを明らかにした。
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