尿路結石形成のリスクファクターの1つである高蓚酸尿症の原因には遺伝性疾患である原発性高蓚酸尿症1型(PH1)、原発性高蓚酸尿症2型(PH2)があるが、大部分は原因不明である。PH1は、肝細胞内に存在するserine/pyruvate:alanine/glyoxylate aminotransferase(SPT/AGT)の異常によって、PH2は、Glyoxylate reductase(GR)の異常によっておこるが、診断方法はいずれも保険収載されておらず、その診断には専門的な注意深い観察、時間・経費を必要とする。原因不明の蓚酸カルシウム含有結石患者の一部はこの酵素異常による可能性が十分にある。近年、GRを抹消血液中の単球を用いて測定し、PH2の診断を行うことが可能であるという報告がなされたが、結石症患者でのGR活性については調査されていないため、本研究を実施する必要性があると考えられる。蓚酸は、尿中で常に過飽和状態にあり、軽度の上昇で速やかに蓚酸カルシウム結晶を作ることがわかっており、この前駆物質の代謝に関わるGR活性の低下によっても尿路結石症を惹起すると考えられる。そこで、本研究においてPH1症例のSPT/AGT活性を測定するとともに尿路結石症の患者におけるGR、L-Glycerateの測定を行うことにより、未だ原因不明である多くの尿路結石症患者の原因の一部を究明に寄与することを目的とする。平成22年度は(1)PH1症例のSPT/AGT活性の蓄積(2)PH2疑いおよび尿路結石症患者におけるGR活性の測定(3)PH2疑いおよび尿路結石症患者におけるL-グリセリン酸の測定を行い症例の集積を行っている状態で、それらを報告するにはいまだ至っていない。
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