上部尿路結石症における蓚酸カルシウム結石は年々上昇傾向を認め、それに伴う医療費も増加している。上部尿路結石に対する治療は手術療法が中心であるが、結石をすべて取り除くことが出来ないケースが多く、高い再発率も問題になる。今後の有病率や医療費を減らしていくには、再発予防が最も重要であると考える。 今回、HMG-CoA還元酵素阻害薬の一つであるアトルバスタチンがその再発予防薬になりうるかを検討した。今年度は蓚酸カルシウム結石形成のメカニズムとして重要な腎尿細管上皮細胞傷害をアトルバスタチンが抑制する作用を有するかどうかin vitroで研究を行った。まずMDCK細胞(イヌの腎尿細管上皮細胞由来)に蓚酸または蓚酸カルシウム結晶により細胞傷害を惹起し、アトルバスタチンの投与によって傷害が抑制されるかどうか細胞内のLDH測定により検討した。結果としてアトルバスタチン投与により細胞内のLDHが有意に低下していることが認められた。つぎに酸化ストレスの抑制効果を検討するため、DNA酸化損傷バイオマーカーである8-OHdGを用いて細胞内の活性酸素量を推定した。蓚酸または蓚酸カルシウム結晶投与により8-OHdGは上昇していたが、アトルバスタチン投与により有意に低下していた。以上よりin vitroにおいてアトルバスタチンは蓚酸または蓚酸カルシウム結晶による腎尿細管上皮細胞傷害の抑制効果を有することが判明した。 今後は研究方法をin vivoに伸ばし、ラット結石モデルを用いて実験を行う予定である。
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