研究課題
本研究の目的は、膀胱間質細胞が下部尿路の生理的機能にどのように関わり、また過活動膀胱などの機能障害の一端を、間質性細胞が担うかどうかの基礎的なデータを収集することを目的としている。そこで、モルモットの正常膀胱と過活動膀胱モデルに各種手技を適応して、比較検討してみた。Western Blotting法、免役組織染色法では定量的に、膀胱に発現する間質性細胞の発現量やギャップジャンクションの発達の差異を示すことはできなかったが、排尿筋層のムスカリン受容体のサブタイプであるM2、M3受容体の2種類のサブタイプの発現に関しては、免疫組織化学的手法で、この双方のサブタイプとも発現量が増加していることが示唆された。また、多チャンネル同時記録測定微小電極アレイの導入によるモルモット膀胱排尿筋の自発活動電位の新しい評価法を用いた実験では、予備的実験としてモルモットの膀胱では計測範囲の一部に自発性同期性振幅電位変化を認め、カルバコールやATPによって計測範囲の全体にわたって電位変化が同調して拡大伝搬することを報告してきた。それらのスペクトラムは有意に過活動膀胱モデルで増加していた。また、それらの同期性振幅電位変化は、チロシンキナーゼ阻害剤であるソラフェニブやギャップジャンクション阻害剤であるメフロキンによって、濃度依存的に抑制された。以上の実験結果より、正常膀胱と過活動膀胱モデルを比較検討する際、分子生物学的手法よりも生理薬理学的手法の法が、適した実験手技であることが明らかになった。排尿筋の間質性細胞やギャップジャンクションの変化は、直接的に示すことはできなかったが、ソラフェニブやメフロキンによる過活動膀胱モデルでの有意な同期生振幅電位変化の抑制は、間接的に間質性細胞やギャップジャンクションが膀胱閉塞によって増加していることが示唆された。
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International Journal of Urology
巻: 17(8) ページ: 743-752
Fukuoka Igaku Zasshi
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