研究課題/領域番号 |
22591793
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
関 成人 九州大学, 医学研究院, 共同研究員 (90294941)
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研究分担者 |
中山 晋介 名古屋大学, 医学部, 准教授 (30192230)
梶岡 俊一 九州大学, 医学研究院, 特任准教授 (90274472)
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キーワード | 膀胱排尿筋 / 過活動膀胱 / 間質性細胞 / ギャップジャンクン |
研究概要 |
本研究の目的は、膀胱間質細胞が下部尿路の生理的機能にどのように関わり、また過活動膀胱などの機能障害の一端を、間質性細胞が担うかどうかの基礎的なデータを収集することを目的としている。そこで、モルモットの正常膀胱と過活動膀胱モデルに各種手技を適応して、比較検討してみた。Western Blotting法、免疫組織染色法では定量的に、膀胱に発現する間質性細胞の発現量やギャップジャンクションの発達の差異を示すことはできなかったが、排尿筋層に発現するムスカリン受容体のサブタイプであるM2、M3受容体の2種類のサブタイプに関しては、双方のサブタイプとも発現量が増加していることを確認したのみならず、c-kit陽性の間質性細胞には、M3受容体が優位に発現していることを確認した。また、等尺性収縮張力測定法を用いた実験では、膀胱のペースメーキングの発生、伝搬に関連すると思われる各種薬剤の効果を検討した。ヒト膀胱排尿筋をこの張力測定装置に適用したところ特徴的な2種類の収縮タイプを記録することができた。一つは、カルバコールなどのアゴニストによるムスカリン受容体刺激による持続的な一定の収縮で、もう一つは、刺激なし、あるいはムスカリン受容体の低刺激によって観察される持続的な周期性振幅性収縮である。この後者の収縮が、ペースメーカ細胞すなわちc-kit陽性間質性細胞が関係する収縮と考えられている。そこでc-kitはチロシンキナーゼ型であるので、チロシンキナーゼ阻害剤であるソラフェニブ、周期性の振幅の伝搬の電気的役割を果たすギャップジャンクションの阻害剤であるメフロキン、また膀胱出口閉塞では、排尿筋のRhoキナーゼ活性が増加しているので、Rhoキナーゼ阻害剤であるファスジルを用いてこれらの収縮に対する効果を検討した。すべての薬剤ともに、持続性収縮よりも振幅性周期性収縮をよりよく抑制した。以上のことより、上記の3種類の薬剤は、ペースメーカ細胞の生理機能を利用した排尿治療薬となり得ることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
マイクロアレイシステムの不調により、間質性細胞の電気生理学的特性の把握点についてやや遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
まずはフローサイトメトリの利用による膀胱内のペースメーカー細胞の取得収集効率を高めることで、分子生物学的手法や、生理学的手法の実験効率をあげることが可能であるので、まずはそこに焦点を絞り込む。膀胱のペースメーカー細胞の取得後は、分子生物学的手法では、RT-PCR法Western Blotting法を駆使して、膀胱ペースメーカー細胞に特異的に発現するイオンチャネルや蛋白を検索する。特にセロトニンレセプターや、Rhoキナーゼ活性について検討する。また、生理学的手法では、パッチクランプ法やCaイメージングシステムを適用して、オシレーション電流の発症機序や、その生理学的制御を検討する。
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