研究概要 |
下部尿路機能(蓄尿と尿排出)は橋より上位の排尿中枢と下位の仙髄によって制御されているが、その神経伝達物質はまだ十分に解明されていない。本研究では下位排尿中枢である脊髄に焦点をしぼり、覚醒したラットの排尿筋と外尿道括約筋の機能を同時に測定することによって、(1)蓄尿や尿排出時における興奮性ならびに抑制性神経伝達物質の個々の作用ならびに相互作用を網羅的に解析すること、(2)それら神経伝達物質の分泌をシナプス前後で調整し得る薬剤を探求することにより、中枢における下部尿路機能障害治療薬を新規に確立することを目的とする。 平成24年度までの基礎実験により、下位排尿中枢である脊髄における膀胱機能ならびに尿道機能をコントロールしている受容体のひとつとして、イミダゾリン受容体が強く関与していることが判明した。イミダゾリン受容体は現在3つに分類されており(I1, I2, I3)、中枢神経系に発現が確認されているI1とI2受容体の下位排尿中枢への影響に関して、Clonidine(I1受容体アゴニスト、α2アドレナリン受容体アゴニスト)、Idazoxan(I1受容体アンタゴニスト、I2受容体のリガンド、α2アドレナリン受容体アンタゴニスト)、Benazoline(I2受容体リガンド)、B-HT933(α2アドレナリン受容体アゴニスト)、Yohinbine(α2アドレナリン受容体アンタゴニスト)をそれぞれ髄腔内に投与した時の膀胱機能、膀胱内圧上昇時尿漏出圧、血圧の容量依存的変化を比較検討した。その結果、1)尿道機能はI1受容体アゴニストで低下、I1受容体アンタゴニストで上昇、2)血圧はI1受容体アゴニストで低下、I1受容体アンタゴニストとI2受容体リガンドで上昇、3)膀胱機能はα2アドレナリン受容体アゴニストで低下、α2アドレナリン受容体アンタゴニストで上昇することがそれぞれ判明した。
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