研究実績の概要 |
【目的】clonidineやtizanidineなどα2アドレナリン受容体(α2-AR)に作用する薬剤のなかにはイミダゾリン受容体(I-R)にも作用する薬剤がある。そこで、本研究では脊髄内のα2-ARとI-R(脊髄内にはI1-RとI2-Rが存在する)の排尿機能へ及ぼす影響について検討した。 【方法】SD雌ラットを用いて、検査3日前にイソフレン麻酔下で髄腔内カテーテルをL6/S1レベルに留置した。覚醒拘束下でclonidine(I1-R/α2-AR agonist)、idazoxan(I1-R/α2-AR antagonist, I2-R ligand)、benazoline(I2-R ligand)、B-HT933(α2-AR agonist)、yohinbine(α2-AR antagonist)を髄腔内に0.3, 3, 30nmolずつ累積投与した時の膀胱内圧、尿漏出圧、血圧の変化をそれぞれ測定した(各n=5)。 【結果】clonidineは排尿閾値圧を有意に上昇させ、30nmol投与で3匹が尿閉となった。同様にB-HT933も排尿閾値圧を有意に上昇させた。一方、idazoxanとyohinbineは排尿閾値圧と排尿間隔を有意に低下させた。次に、clonidineは尿漏出圧を有意に低下させ、idazoxanは尿漏出圧を有意に上昇させた。また、clonidineは血圧を有意に低下させ、idazoxanとbenazolineは血圧を有意に上昇させた。その他のパラメーターに有意差は認められなかった。 【結論】おそらく脊髄内の膀胱求心路にはα2-ARが存在し、排尿閾値圧を制御している可能性が示唆された。また、脊髄内のI1-Rの作用として、尿禁制に関与する尿道平滑筋あるいは外尿道括約筋や骨盤底筋群(横紋筋)の活動を制御し、尿道抵抗をコントロールしている可能性が示唆された。
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