研究課題/領域番号 |
22591805
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
水谷 一夫 名古屋大学, 医学部附属病院, 助教 (20303612)
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研究分担者 |
服部 良平 名古屋大学, 大学院・医学系研究科, 准教授 (20324410)
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キーワード | kidney transplant / HLA antibody / mRNA / C4d / rejection |
研究概要 |
本研究の目的は各種サイトカインや抗体の測定を行うと同時に患者リンパ球にex vivoで刺激を加えてmRNAの変化を測定し、患者の免疫状態のモニターを行い、その結果を用いてテーラーメードの免疫抑制両方の開発を行うことであるが、今年度も長期予後の解析のため患者の血液等のサンプルの収集し、同時に一部患者の検査及び解析を行った。今年度は長期の腎移植の生着例の抗HLA抗体に関して調査を行った。今回の検討では抗HLA抗体は長期にわたり抗体が発現している症例で生着している症例もあるが、統計学的解析では抗HLA抗体を発現している群では機能廃絶群に抗HLA抗体の発現症例が優位に多かった。(p=0.001)また抗体のMFI(mean fluorescence intensity)が10000以上ある群では機能廃絶症例が優位に多く(p=0.039)、抗体の有無だけでなく抗体の強さも腎移植の生着に関係することが示された。 免疫抑制剤のミコフェノール酸モフェチル(MMF)の濃度についても検討を行った。今回は当科におけるMMF使用群34症例を対象とし高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を使用して活性を持つ血漿中ミコフェノール酸(MPA)と代謝産物で活性を持たないミコフェノール酸グルクロナイド(MPAG)の外来でのトラフ濃度の測定を行った。MMFの平均投与量は868mg/日で平均血清クレアチニン濃度は1.5mg/d1であった。当科のMMF投与量は患者の体重との間に明らかな関連は認められなかったが、腎移植の経過が長くなるにつれて減量される傾向があった。またMPAとMPAGの間には明らかな関連は認められず、MMFに影響を与えると考えられるMPAの測定のみで十分と考えられた。プログラフ投与群では投与量が増大するとともにMAPの増加がみとめられたが、シクロスポリン投与群ではその傾向はみられず、また腎機能低下群ではMPA濃度の高い症例が多かった。 以上より腎機能や免疫抑制剤の種類によりMMFの投与量を変更する必要がある可能性が示され、テーラーメード免疫抑制のためにはMPAの濃度も考慮しなければならない可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
経過観察は順調に行えているが、拒絶反応などのイベントを発症した症例が少ないため、現時点では解析が不十分である。
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今後の研究の推進方策 |
これまでのデータの解析を行い生着率に影響を与えると考えられる免疫抑制状態のモニターのプロトコールを作成し、このプロトコールに沿って腎移植症例の経過観察を行いプロトコールの有用性を確認する。
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