大阪大学臨床研究倫理委員会への申請を行い、審査、承認後に、ボランティア(健常群・不妊群)生殖機能評価ならびにサンプル収集を行った。 不妊患者で、医学的適応があり患者同意が得られた約20名の精巣生検術や精巣内精子採取術を行い、その成績を明らかにした。また適応に応じて顕微授精などの不妊治療をおこない、その治療成績を収集している。さらに精液サンプルの収集を約100例行い、近赤外線分析法にて解析したが、精液検査パラメータのデータばらつきが大きく、有用な近赤外線スペクトラムを得ることはできなかった。 近赤外線は検体や生体に影響することなく、透過、反射を短時間で測定可能であることから、患者精巣を対象とした解析が可能であった。測定対象の水分・蛋白質・炭水化物など濃度、血行動態・代謝状態さらにさまざまな生体内の変化を高い感度で検出できる超高感度瞬間マルチ測光システム(大塚電子、MCPD7000MS)およびプローブを使用し、上記20名の不妊患者の精巣組織から得られるスペクトラムを測定し、安定した測定結果を得られる条件設定を行った。得られるスペクトラムのうち、まずは精巣組織では既存のデータから波長相対変化が既知となっている酸素化ヘモグロビンおよびチトクロームCオキシダーゼを測定しデータを収集し、これか2つのパラメータから精巣内精子の存在を予測できる可能性を見出し、報告した。しかし、精巣においても主成分分析による新たなパラメータを見出すことはできなかった。やはり、精巣内精子を確実に確認する既存の方法がないことが障壁となっていた。そのため、我々はこの基準となる組織学的アトラスを作成し、その有用性を明らかにして、報告した。
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