当該研究は、科学研究費(平成19~21年度)の補助を受けて確立された「簡便かつ確実性の高いラット射精機能評価モデル」を用い、「射精発現の中枢性調節機構の解明とそれに基づく合理的な治療薬の探索・創薬」を研究期間内の課題としている。平成22年度(初年度)は、この評価モデルを用いて選択的5-HT2C受容体アゴニスト(AG)ならびにアンタゴニスト(AT)の「脊髄腔内ならびに脳室内投与」の影響を検討し、「中枢5-HT2C受容体の活性化が射精を促進し、受容体遮断が著明に射精を遅延すること」を明らかにし、射精発現調節における中枢5-HT2C受容体の強い関与を示唆した。この結果を踏まえ、平成23年度は研究の中心課題である「5-HT2C受容体ならびにD2受容体AG併用投与(以下、AG併用投与)による非常に顕著な射精機能増強効果」の発現機構ならびにその作用特性(耐性発現の有無、排尿機能に対する影響)を検討した。その結果、中枢への移行性の高いAG同士の低用量併用が強力かつ効果的に射精機能を促進し、この効果には耐性が形成されないことや排尿反射に影響を及ぼさないことなど明らかにし、中枢5-HT2C受容体およびD2受容体の同時刺激を標的とした治療薬開発への道筋を提示した。平成24年度は、上記知見の臨床応用を視野に入れ、1)AG併用投与が加齢ラットおよび糖尿病モデルラットにおける射精機能低下に対する影響ならびに、2)選択的5-HT2C受容体ATの射精遅延効果について、現在臨床で使用されている選択的5-HT取り込み阻害薬(SSRI)と比較検討した。その結果、AG併用投与は加齢ラットの低下した射精機能を改善することならびに、選択的5-HT2C受容体ATがSSRIに比べて極めて強力な射精遅延効果を示すことを明らかにした。現在、肥満2型糖尿病ラットの射精機能低下に対するAG併用投与の効果を観察中である。
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