研究概要 |
凍結保存胚の研究目的での使用に同意の得られた39組の夫婦、計78名より採血を行い、白血球よりDNAを抽出、PCR、ダイレクトシークエンス(もしくは制限酵素処理)によりいくつかのインプリンティング遺伝子のexonにおけるSNP(Single nucleotide polymorphism)を調べた。NDN exon1におけるMboI polymorphism、IGF2 exon9におけるApaI polymorphismについては、夫婦間の受精卵において発現アレルの解析が可能なカップルが、それぞれ10数組ずつ得られた。 インプリンティング遺伝子の胚盤胞における発現を確認するため、研究参加に同意が得られたが、夫婦のインプリンティング遺伝子解析の結果、発現アレルの同定が不可能で、研究に不適とされた夫婦間の凍結胚盤胞を融解し、DNA,RNA抽出、個々の胚盤胞におけるgenomic PCR, RT-PCRを行い、NDN, IGF2のSNPを含む領域の増幅を試みた。結果、genomic DNAによりDNAレベルでの増幅は安定した結果が得られたが、NDN, IGF2の発現が確認された胚盤胞はそれぞれ20-30%程度にとどまり、安定した発現が確認できなかった。 次に、DNAメチル化に関する解析の予備実験として、体外受精時に得られた廃棄前の顆粒膜細胞を用いて、genomic DNAを抽出、バイサルファイト処理を行った後、IGF2-H19のDMR領域をPCRにより増幅、制限酵素切断により、メチル化アレルおよび非メチル化アレルの存在、またその存在比を求めることに成功した。このことは、個々の胚盤胞において、制限酵素で認識される塩基のメチル化、非メチル化の程度を定量化でき、インプリンティング遺伝子発現制御の解析に大いに役立つ所見と思われる。
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