研究課題
これまでの臨床検討により胎盤機能不全とそれに関連するchorangiosis(胎盤血管腫症)を合併する症例において、胎盤の酸素濃度が上昇していることが明らかになった。(chorangiosis and placental oxygenation-胎盤血管腫症における胎盤組織酸素化の検討-Congenital anomaly 49:71-76,2009.)しかしながら、この胎盤酸素濃度上昇とういう病態の詳しいメカニズムおよび意義は不明である。そこで、この胎盤酸素濃度上昇という病態を実証・解明するために、妊娠ミニブタによる動物実験を行った。ミニブタは、ヒトと類似した胎盤構造をしている。妊娠ミニブタの下腹部を切開し子宮表面に到達する。子宮表面から超音波にて胎盤を確認後近赤外線プローべを胎盤直下に装着する。ついで、子宮筋層を一部切開し胎仔に到達しその背部にもプローべを装着する。ここで胎児血流すなわち臍帯血流を変化させることによる胎盤・胎仔の酸素状態の変化を検討した。この実験にて、胎児循環が胎盤酸素濃度上昇のメカニズムに大きな役割を果たしているということが証明できた。臍帯血流を途絶させることが胎盤酸素濃度を上昇させ、胎仔の酸素濃度を低下させることが確認された。すなわち、臍帯全体を圧迫することにより胎盤から胎仔への酸素供給が低下するため、胎盤に残存する酸素が増え酸素濃度が上昇し、胎仔への酸素の供給が低下するため、胎仔の酸素濃度は低下することが証明された。臨床にて観察された胎盤酸素濃度が上昇しているという病態が動物実験にて再現することができた。胎盤機能不全は、子宮内胎児発育不全や子宮内胎児死亡などと密接に関わっている疾患である。今回の研究により、胎盤機能不全が胎児自体の臍帯血流と深く関連していることが示唆された。このことから、胎盤機能不全を治療として、胎児の血流を改善させるという新しい胎児治療が研究されるべきであろう。
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